今年のIJT第30回 国際宝飾展)ではラボ・グロウン・ダイヤモンド合成ダイヤモンド)を取り扱う業者も複数出店。セミナーも「天然 VS 合成ダイヤモンド」(講師 ジャパン ジュエリー ビジネス スクール校長 畠 健一 氏)、「合成ダイヤモンドのマーケット展望」(講師 (株)矢野経済研究所 理事研究員 深澤 裕 氏)と2019年は後に合成ダイヤモンド元年と言われることになりそうですね。

テレビの地上波、BS放送のニュース番組、情報番組ではたびたび「養殖ダイヤモンド」、「グロウン・ダイヤモンド」等の名称でも紹介されている合成ダイアモンドは、もはやどこか遠い場所での話ではありません。ジュエリーを取り扱う全ての事業者は正しい知識を持って消費者への説明ができることが必要です。例えば「合成と天然ダイヤモンドは見分けることができるのか。何が違うのか。天然としてラボグロウン・ダイヤモンドを売っているのではないか」などなど。

合成ダイアモンドはダイアモンド原石採掘に伴う環境問題とは無縁なサステイナビリティ(持続可能性)という点でアドバンテージがあります。また光学的な美しや耐久性が天然と同じという特性があります。

しかし一方で、合成ダイアモンドにはなく天然ダイアモンドだけが持つ特性があることも事実です。代表的な違いは3つでしょう。

ひとつは「自然が創り出したという神秘性」。自然環境では地球深部だけで実現する高温高圧環境下で生成されたダイアモンドの結晶が、地球のダイナミックな運動によって生じたマントルの地表への爆発的速度での湧昇という現代ではあり得ない、まるで物語の世界のような出来事によって地上に運ばれてきた美しい結晶であるという事実。

ふたつめは、希少性。

最後は雇用問題への寄与。ダイアモンドの鉱山は、多くの場合に人里から遠く離れた場所で見つかります。鉱山が開発されるとなれば莫大な資本が投下されて鉱山労働者の雇用が創出され、労働者の子どもたちのために学校が作られて、今まで教育機会に恵まれなかった子供達にも恩恵が及びます。病院が作られ、商店が生まれ、そこに町ができるという例がボツワナをはじめアフリカ諸国で見られます。ダイヤモンドの研磨工場ができて雇用機会がさらに増えるという例もあります。鉱山と近隣の町をつなぐ道路が整備されてインフラも向上するでしょう。天然ダイアモンドによって人々の暮らしが豊かになり、便利になるケースも多いのです。合成ダイヤモンドのサステイナビリティに優れるという利点が報道でよく耳に入りますが、天然ダイアモンドの雇用への貢献に関する報道は、合成ダイヤモンドに関わるニュースの中では皆無であり、報道の公平性に欠くと言わざるを得ません。メディアの方々は、「合成ダイヤモンドは環境に優しい」というような報道をする際には「天然ダイヤモンドは雇用対策への貢献が大きい」という点も合わせて伝えてこそ視聴者に適切な情報を伝達したということになるでしょう。

弊社では先日複数のソースから合成ダイヤモンド1ダースを購入。現在ラボで調べてもらっています。近日メールマガジン「宝石学の世界」では、ラボではどのような手順(検査)で天然ダイアモンドと合成ダイアモンドが識別されるのかお伝えする予定です。

この動画は、デビアスとボツワナ政府のジョイントベンチャーとしてスタートしたデブズワナDEBSWANA)でのダイアモンド採掘事業を紹介したもの。子どもがダイアモンド鉱山開発によって教育を受けることができるようになった実情なども紹介している。

関連ニュース:デブズワナ、2004年に採掘したダイアモンドは3040万カラット

合成ダイヤモンドに関する動画ニュース(You Tube)

ANN NEWS  日本ジュエリー協会会長インタビュー 2019.1.24放送

ANN NEWS 2019.1.23放送