ブルー　カラー

今月（※）が誕生日というひととバーに行った。何か誕生日らしいカクテルを注文してあげたいと思った。

　

"誕生石はターコイス、ブルージルコン。射手座は...えー、トパーズだったか？"

　

などと鈍くなった頭で、近づいてくるバーテンダーを見ながら考える。バーでは断定的に注文するのが好きだ。その方が、自分のする事は分かっているという態度を表明しているようで宜しい。

　

「何をお作りしましょう？」

　

とバーテンダー氏。

　

「ブルーマンデーをふたつ」

　

と捻り出す。しかし、注文して直ぐ軽い後悔を覚えた。 "このカクテルは連れには強すぎるかも"、"ブルーは慶事に相応しくないな"などと。ブルーマンデーを飲むことを"断定"した割にはだらしがない。

　

なぜブルーは慶事によろしくないと直感的に思ったのだろうか？恐らく青から連想する"ブルーな（憂鬱な）気分"、"ブルーフィルム"といったネガティブなものの影響だろう。 しかし、色彩心理学的には、"広々とした空","海"を連想させ、やすらいだ気持ちを引き出す作用もあるのは心強い。

　

ブルーマンデーをミキシンググラスに携えたバーテンダーが戻ってきた。コースターの上に、冷凍庫で凍らせたカクテルグラスを置き、注ぐ。カクテルグラスを満たす青い液体を見つめる連れの瞳は興味津々といった感じで輝いている。どういう具合か、キッチリ２杯注ぐとミキシンググラスの中身は空になった。厳密に計量したのか、はたまた経験の賜物かいずれにせよ、プロとして自分の成すべき仕事を果たしているのを見るのは清々しい。

　

連れが青い液体に口を近づけている。さて、「美味しい」といってくれれば良いのだが。

※：本稿は、１９９９年１２月１４日に公開されたメールマガジン、宝石学の世界の記事より抜粋し、掲載している。

　

…　…　…

十二月の誕生石：トルコ石、ジルコン（ブルーが一般的）

射手座の石：トパーズ

ブルー：[希望]、[誠実]を表す。

Posted: 2003/07/26