▼ INDEX 1.宝石研磨のコツ −ご投稿記事− 2.宝石学Q&A 3.Picked up News …………………………………………………………………………………… ◆1.宝石研磨のコツ −ご投稿記事− ∽∝∽∝∝∝∽∽∽∝∽∝∽∝ ご投稿者様:Ueda様 石の小傷をとるのは、大変な労力を伴うかわりに、得られるものが少な い仕事です。パソコンのクロックアップと同じで、研削は自信がないと お勧め出来ません。手作業に限定して、・・・ ◎深く大きな傷: 表面光沢を得るためには、下地の段階で完全に傷をとりながら成形しま す。金剛砂または耐水性のサンドペーパーを荒めの#600から仕上げ の#2000ぐらいまで変えながら、傷をとります。サンドペーパーの 番手を変えるときは、必ず研削物を水洗いをして研磨剤を洗い流します。 石を不完全に保持していると、虫眼鏡の凸レンズのように真中が膨らん だ角がダレた仕上がりになります。鏡面仕上げには、ワックスで石を保 持するか、ピンバイスで挟むかの工夫が必要です。 また、サンドペー パーを使う場合は、硬いく平らな板(定盤、ガラス板、タイルなど)の 上に置きます。 この段階で、仕上がり具合は容易に想像出来ます。軽い小傷などは、次 の段階からはじめても十分きれいになります。2000番の耐水サンド ペーパーで、きれいに傷が取れていますと研削面は、軽くサテンナー (薄曇)のかかった状態になります。 以上が石を研削する上で、艶を出すよりも一番難しい作業です。しかし ここまで出来れば、後は簡単です。 ◎つやだし: 羽子板やタンスなどに使われる桐の板を用意します。桐は、木目が無く 密度が均一な為宝石研磨以外にも幅広く使われています。 桐の板をすり板に固定し、ダイヤモンドペーストを薄く塗ります。ダイ ヤモンドペーストは、工業用ダイヤ(デビアの方は、ダイヤを組成から 2種類に分けているそうですが・・・)を微細粉末にして油を添加した ものですがもちろん、キラキラ光りません。 JIS規格などに、詳しく書かれていますが、10ミクロン(古くてすいませ ん)ぐらいのメッシュで、十分鏡面光沢が得られます。これ以外にも、 角の粉(鹿の角)・ルビーパウダー・酸化クロム・ベンガラなどありま すがダイヤモンドペーストは、仕事の速さと値段も4千円前後と手ごろ です。 エメラルドなど熱や衝撃に弱い石は、ピタッと板にくっ付かせて静かに 擦ります。 石の硬度にもよりますが、これだけでも、研削、研磨と加工物の表面を 摩擦熱で融かしながらつやを出す工程を同時に行えます。・・ただし、 ダイヤは融けないのでこれでは光りません。 以上、傷の深さにも拠りますが、手作業で石を磨くのは大変な仕事です ので、身の回りにあるものを利用して道具を作ってみるのも楽しいです。 ex.)家庭用ポータブルミシン・・・ 右側面に、はずみ車(?)があります。そこに、桐の板を丸くコースタ ーのように切り、ガムテープやボンドで留めてみましょう。(奥さんの 了解を得てください)しっかり、留めないとフリスビーのように空を飛 んで怪我をします。しかし、ペーストを塗った面に軽く押し当てるだけ で面白いようにきれいになりますが、水を垂らしながらの作業は感電の 危険がありますので熱に弱い石は、チョコット当てて冷やすを繰り返し ます。また、カボションカットには、桐板に溝を彫ってそこに滑らすと 完璧です。 爪が少し引っかかる程度の軽い傷は、テーブル面もダレず鏡面仕上げが 出来ます。 以上、バフ・モーターやリューターが無いとの前提ですが・・・ *注:前号のQ&Aで私が応えられなかった、宝石研磨についてご投稿 いただきました。Ueda様に改めて御礼申し上げます。ありがとうござい ました。 ☆∽∝∽★∝∽∝∽∝☆∝∽∝∽∝∽∝☆∝∽∽∝∽∝∝∽∝∽∝∽☆ ◆2.宝石学Q&A ∽∝∝∝∝∽∝∽∝∽∝∽∝∝∽∝∽∝∽∝∽∝∝ Q:大谷様  □e-mail:mtak@alles.or.jp(ご本人承諾の上掲載)  □プロフィール:貴金属宝飾品加工 > から始まる文章がご質問。 > Q: > 一つ質問させていただきたいのですが、一般的にエメラルドの超音波 > 洗浄はオイルが抜けることによる色落ちが心配される為、出来ない事 > になっています。しかし最近では樹脂系の含浸が多く用いられている > ようになっているように聞いたのですが、樹脂による含浸エメラルド > は超音波洗浄出来るのでしょうか? A: 出来ません。後段で大谷様ご指摘の通り、超音波洗浄しても変化が認め られない場合はあります。出来ないとは、避けた方が無難とご理解いた だくと宜しいかと存じます。また、3年ほど前からと記憶していますが 「ジェマトラット」と呼ばれる新しい含浸法(やはり合成樹脂含浸です が具体的な処理法不明)が開発されました。この処理が施された含浸物 質は従来の樹脂含浸と比し耐久性が高いという報告があります。 > Q: > また、オイル含浸のものと樹脂含浸のものを、見分ける方法というの > は有りますか? A: 近年は、合成樹脂が主流です。 検知法:拡大検査、赤外線分光検査 オイル含浸の指標; 処理後数年以上(年数は正確には不明。恐らく10年以下では現れない のではと私は理解しています)を経ると、経年変化により退色し、フラ クチャー中のオイルが茶色味を帯びて観察される場合があります。合成 樹脂には見られません。 合成樹脂含浸の指標; 顕微鏡で、宝石の、対物レンズと反対のファセットが光を反射している 状態で観察すると、ある角度で合成樹脂はオレンジ色に光ります。これ をオレンジフラッシュと呼びます。天然オイルからは通常見られません。 (天然オイルからの報告例もありますが、私自身は見たことがありませ ん) いずれも、多くの石を観察し、退色したオイルやオレンジフラッシュの 見え方を理解していないと判断は難しいかもしれません。 オレンジフ ラッシュは、[宝石・鉱物小事典]中で「フラッシュ効果」としてダイア モンドのガラス充填処理の証拠として掲載している拡大写真が有ります が、これに見え方が似ています。ダイアモンドの場合は色々な色が観察 されますが、エメラルドの合成樹脂の場合はオレンジ色です。 > Q: > それと余談ですが、超音波洗浄出来る石と出来ない石というものが、 > よく表になって掲載されることが有りますが、そのような表ではダイ > アモンド以外の石は、ほとんどが洗浄できないように記載されていま > す。宝飾品制作の現場では、超音波洗浄が出来ない石として、エメラ > ルド・オパール・ラピスラズリ・トルコ石・真珠くらいしか知られて > いませんし、実際「出来ない」とされている石を洗浄しても、変化は > 認められないように思います。超音波洗浄出来ないとされるのはどう > いうことが基準となって決められているのでしょうか? A: 劈開性、化学組成、インクルージョンの傾向です。 ◎劈開性:[宝石・鉱物小事典]をご参照下さい。ただ、劈開性を有する  宝石は全て超音波洗浄が危険という訳ではありません。例えばダイア  モンドも劈開性を有しますが、超音波洗浄は問題ないのはご存じの通  りです。 ◎ここでいう組成の傾向:  例えば炭酸塩鉱物は安定性が低く、超音波洗浄に用いる溶液が良くあ  りません。またこれらの鉱物は一般に靱性が低く、音波で割れる可能  性があります。 ◎インクルージョンの傾向:液体インクルージョンを通常内包する宝石  の場合、超音波により液体が膨張し、石を割る、あるいはフラクチャ  を広げる可能性があります。 > Q: > また超音波洗浄出来ないとされている石を洗浄した場合、見た目には > 変わらなくても、実際には劣化などの悪影響が出ているのでしょうか? A: 実際には全く影響がない場合も多々あると考えます。避けた方が無難と 読み替える事が出来ると思います。 ただ、先程挙げていらしたエメラルド・オパール・ラピスラズリ・トル コ石・真珠以外でも、孔雀石、カルサイト、フローライト、ムーン ス トーン、トパーズ(特に肉眼で見えるインクルージョンがある場合)な どは危険性が高いと言えます。 *注:上記の記事に関連した写真、説明は以下のURLの、[宝石学の世界 Vol.6関連項目]よりリンクがあります。 http://www.yk.rim.or.jp/~ofukumot/ ☆∽∝∽★∝∽∝∽∝☆∝∽∝∽∝∽∝☆∝∽∽∝∽∝∝∽∝∽∝∽☆ ◆3.Picked up News ∽∝∽∝∽∝∽∝∽∝∽∝∽∝∽∝∝∽∝∽∝∽ ■ジェネラル エレクトリック社の技術を用いた処理ダイアモンド 今年の3月以来、宝飾業界ではGE POLと呼ばれる処理ダイアモンドが関 心を集めている。11/14付けのNew York Postは、業界紙以外で、恐らく はじめて関連記事を掲載した。 http://www.nypost.com/111499/news/10580.htm …………………………………………………………………………………… ■第8回国際化石鉱物ショー開催予定発表 池袋サンシャインシティー 文化会館2階 12月10日(金)〜12月13日(月) 4日間 午前10:00〜午後6:30(最終日午後4:00) 入場料(公式ガイドブック付):大人600円学生300円中学生以下無料 4日間通し券1000円(学生500円) http://www1.biz.biglobe.ne.jp/~Planey/event.htm *ご出展なさる方がおられましたらご一報下さい(^^)。本誌上でご紹介  させていただくと共に、ご挨拶に伺わせて頂きたいと思います。 …………………………………………………………………………………… ■ご意見、ご感想、ご質問などお待ちしています!  宛先 ofukumot@yk.rim.or.jp  ご意見などは、極力紙面に反映させます。  ご連絡いただいた内容は、特におことわりを頂かない限り、当誌上で  編集の上、お名前(あるいはニックネーム)と共に紹介させていただ  く場合がございます。 …………………………………………………………………………………… ■[宝石学の世界] 6号 1999/11/16 ■Web site http://www.yk.rim.or.jp/~ofukumot/ ■購読の解除:[宝石学の世界]購読解除とご記入いただき  ofukumot@yk.rim.or.jpまでご連絡下さい。 ■配信アドレスの変更:[宝石学の世界]配信アドレスの変更と題名とし  て、本文に旧アドレスと新アドレスをおご記入いただき  ofukumot@yk.rim.or.jpまでご連絡下さい。 ■発行人:福本 修 ■(C)Copyright 1999 by Osamu FUKUMOTO. All Rights Reserved. ■記事を許可なく転載することを禁じます。 ……………………………………………………………………………………