[宝石学の世界]--Vol.232-20050705 1. 宝石への処理に関して頂いたご質問 2. 宝石関連の新刊図書情報 - G&G - ☆∽∝∽∽★∝∽∽∝∽∝☆∝∽∽∽∝∽∝∽∝☆∝∽∽∽∽∝∽∝∝∽∝∽∝∽☆ 1. 宝石への処理に関して頂いたご質問 ∝∝∝∽∽∽∝∽∝∽∽∽∝∽∝∽∽∽∝∽ 前号(※)で宝石に関する処理ついて記しましたところ、沢山のご意見などを頂きま した。ありがとうございます。順次返信しておりますが、拝領したメールがかなりの 数に上る為、全てのご意見に返信が適わない事をお許し下さい。 ※前号:以下のページに掲載 http://www.gem-land.com/melma/231.txt Q: ミャンマースター さん 熱処理に関する、お話とても興味深く拝読いたしました。 確かに、市場に出回っているルビーの殆どは加熱処理されたものですが、しかしそれ でも色・照り・輝きともに優れているものとなると殆ど、見かけませんね。 特に照りについては処理石、天然石に関係なく、本来石自体が持っている特性ですの で、もし照りが優れていてその上、色も良いルビーならば例え加熱石でも、相当高い 評価が与えられてもよいと私は思いますが、福本さんは此の点についてはどのように お考えですか? 確かに非加熱石であることに越したことはないのですが、市場に出回っている非加熱 石は大概、色がよくても輝きがなかったりまたその逆であったりと欠点が目立つもの が多いようです。それでもただ非加熱という理由だけで法外な値段で売られている事 が多い。 それならば加熱石でも、品質が良いものを購入した方がいいと考えるのは 私だけでしょうか? そりゃ非加熱で色、照り、輝きともに申し分ないものは僅かながら存在するでしょう がそんなものは欧米のセレブといわれている一部の大金持ちのところに渡ってしまい 我々には全く縁がないものになってしまうのでしょうね。 そう考えると品質がよければ、加熱石でも高い評価が与えられるべきだと思います。 現に、星の数ほどの宝石が販売されている、御徒町の宝石街を歩き回ってもいろ照り 輝きと三拍子揃ったルビーは殆ど見かけませんでしたので(業界の人の話によると、 加熱石と非加熱石との識別は、専門家の間でさえ かなり困難な作業のようで、非加 熱と鑑識されたものでも実際そうであるかどうかわからないというのが現状であるこ とを考慮すると、あまり非加熱石にこだわるのもどうかなと思います)。 A: ルビーとはクロムによって発色した赤色の宝石ですが、地核中に占めるクロムの割合 は、わずか0.0001%に過ぎません。この一事をとっても、ルビーとは本当に希 少な宝石だと納得させるではありませんか。ましてや、ほとんどのルビーは不透明で あったり、あるいは不純物が多すぎるものですから、宝石として用いることが出来る 透明感のあるルビー結晶とは、その存在自体が奇跡のようなものです。そしてその奇 跡のような宝石は、遙かマダガスカルやミャンマー、あるいはアフリカ大陸などの山 河で採掘され、幾人もの手を経てはるばると日本まで運ばれて届くのです。このよう な事を思うとき、私は宝石とはなんと夢のあるものだなぁとつくづく思うのでありま す。 ルビーに対する熱処理の場合、処理によって無色や淡い色の石から赤色が出現したり 赤色自体が強く鮮やかに発色する訳ではありません。元々ルビーに足る赤色を呈する 石に処理を行い、石に混ざる暗色を取り除く事によって色目が向上するケースがある のです。 つまり、熱処理を経ていてさえも色目の良い美しいルビーとは誠に希少な存在である ということを云わんとしています。私は熱処理によって多少色が向上していたとして も、紛れもなく自然界で生成された美の結晶に賛美の視線を向けずにはいられません 最後に“照り”について。この単語は光学的な用語ではないだけに人により定義に違 いがあるのでしょうが、カラード ストーンの照りの場合、一般に石の地色、石表面 からの光の反射、そして石内部からの光の反射を総合的に勘案して知覚される印象の 事かな、と理解しております。仮に“照り”をそのように定義するならば、これは熱 処理に影響を受けます。処理の温度と加熱時間及び除冷速度によってインクルージョ ンが影響を受けるからです。例えば、石の中に存在する無数の針状のインクルージョ ンが熱によって部分的に融けてミルキィな外観を示すことが多々ありますが、この場 合そのミルキィな部分、つまり表面だけではなく、石の内部からの光の反射も加わっ てベルベットのような光沢を示すことがあります。このような“照り”を示す宝石を 私は好きです。恐らく、同意して下さる読者もいらっしゃると思います。 熱処理ル ビーで有ることを開示すると販売に差し支えるとお考えの小売店様もいらっしゃるで しょうが、処理によって生じるこのような、少なくとも私には魅力的と思える副産物 にスポットを当てる事は、熱処理をポジティブに捉えるひとつの方法だと思います。 ▼ルビー http://www.gem-land.com/daio/dictionary/ruby.shtml ☆∽∝∽∽★∝∽∽∝∽∝☆∝∽∽∽∝∽∝∽∝☆∝∽∽∽∽∝∽∝∝∽∝∽∝∽☆ 2.宝石関連の新刊図書情報 - G&G - ∝∝∝∽∽∽∝∽∝∽∽∽∝∽∝∽∽∽∝∝ ジェムズ&ジェモロジー(発行GIA)の日本語版最新号が刊行された。 ヘッドラインは以下の通り。「ベリリウム拡散処理サファイアの新しい検出法」など は関心が高いかと思われる。 ●第一回GIA宝石学研究会議 ●投稿 ◎ルビー インクルージョンに由来する合成ダイアモンドのフォトルミネッセンス  ピークとは ◎特定の合成カラー ダイアモンドの処理法に関する特許 ◎カット関連論文が「部外者」の貢献を評価 ●みごとなペリドット ジュエリー セットの制作−ヒマラヤから五番街まで ●高温高圧合成ダイアモンドの特徴表の改訂版 ●ベリリウム拡散処理サファイアの新しい検出法  −レーザー誘起ブレイクダウン分光法 ●ラボノート ◎“ミステリー サークル”のあるファセット加工アポフィライト ◎ルミネッセンスを示す“ホッパー”ダイアモンド ◎“磁気を帯びた”天然ピンク ダイアモンド ◎多数の微視的カーボネート インクルージョンが内包されたダイアモンド ◎珍しいほぼ無色の合成ダイアモンド ◎天然の海水イガイ真珠 ◎色処理を施した“ゴールデン”南洋養殖真珠 ◎3色のクォーツ ●ジェムニュース インターナショナル ◎ニッケル濃度が非常に高い天然ダイアモンド ◎タジキスタン、パミール山脈産クリソヒューマイト ◎インド産コランダム・フックサイト・カイアナイト岩石 ◎マダガスカル産の新しい宝石材−クリストバライトとオパールの混合物 ◎マダガスカル産ジェレメジェバイト ◎タンザニア産カイアナイト ◎アフガニスタン産及びパキスタン産サファイア ◎カナダ、バフィン島産サファイア ◎珍しいスター及び“キャッツアイ”サファイア ◎ウクライナ産の大きなキャッツアイ トパーズ ◎注目すべきパキスタン産トリプライト ◎ザンビア及びマラウイのいくつかの宝石産地に関する最新情報 ◎フローライト内のパライバ“スピア” ◎珍しいインクルージョンのあるアリゾナ産ペリドット ◎シャトヤンシーを示すダブル アイ カボション ◎ブラジル産クォーツ内のグラファイト インクルージョン ◎モリデブナイトを内包したクォーツ ◎クォーツ内のルチル“蛾” ◎珍しいカラー ゾーニングのある合成ベルヌイ コランダム ◎模造クラム“パール” ●書評 http://www.giajpn.gr.jp/online_shop.shtml ☆∽∝∽∽★∝∽∽∝∽∝☆∝∽∽∽∝∽∝∽∝☆∝∽∽∽∽∝∽∝∝∽∝∽∝∽☆ 宝石に関するご質問や弊紙に対するご希望などをお寄せ下さい。 http://www.yk.rim.or.jp/~ofukumot/otayori.html ====★宝飾業界関係者様★=========☆発行人の会社が運営しています☆=========== インターネット上の業者証、もうご取得ですか? ▼ 無料の業者証『ジュエリートレード・ロックID』のご申請はこちらです。 http://jtls.net/about_id.html ▲ 複数のジュエリー業界B2Bサイトに共通のID&パスワードでアクセス可能 空枠、ジュエリーケース、地金製品、シェルカメオなどの仕入れが出来ます。 ============================================================================ ■まぐまぐID:0000017866 ■受信アドレスの変更:旧アドレスは[購読解除]ページよりキャンセル  をしていただき、新アドレスをホームページより新規申し込みとして  ご入力下さい。 ■購読解除   ■発行人:福本 修 ■(C)Copyright 2005 by Osamu FUKUMOTO. All Rights Reserved. ■記事を許可なく転載することを禁じます。