[宝石学の世界]--Vol.207-20041013 1. 宝石鑑別の基礎 - ダブリング - 2. 宝石学 Q&A - 合成モアッサナイト VS ダイアモンド - ====PR:================================================================ タンスに眠っているジュエリー、生まれ変わらせませんか! 無料でジュエリーのリフォームを相談できます。 1回の相談で、複数の専門家からの提案を受けることが出来ます。 提案を比較できるから、納得のリフォーム プラン。 http://www.gem-land.com/reform.html ========================================================================== ☆∽∝∽★∝∽∝∽∝☆∝∽∝∽∝∽∝☆∝∽∽∝∽∝∝∽∝∽∝∽☆ ◆ 1. 宝石鑑別の基礎 - ダブリング - ∽∽∝∽∝∽∝∽∽∝∝∽∝∽ ◇宝石鑑別とは、特性の比較を通じて行う 宝石の鑑別作業とは、検査対象である宝石が(あるいは、ガラスの様に 宝石に似た宝石以外のものが)何であるのかを検査する作業を指します。 つまり宝石鑑別においては、まず検査石の特性を検査して、次いでその 結果を既に分かっている宝石の特性と照らし合わせるという作業を行う 事となります。既に特性が明らかになっている、例えばAという宝石の 情報と検査石の情報が合致し、且つA以外に検査石の情報と合致する宝 石がなければ、検査石の正体はAだという事になるのです。 宝石の特性は2種類に大別する事ができます。ひとつは物理的な特性で、 他方は光学的な特性です。物理的な特性としては例えば硬度(どの程度 硬いか)を挙げる事ができ、光学的特性には屈折率(宝石中での光の速 度を空気中での光の速度と比較した数値。宝石中の方が遅い)などが含 まれます。 光学特性の検査では検査石が単屈折性なのか、あるいは複屈折性なのか を決定する事が鑑別上重要です。 なぜならば、この性質は宝石の種類 ごとに固有の性質であるからです。この事を、ダイアモンドを例に記し ます。ダイアモンドは単屈折性の宝石です。全てのダイアモンドは等し く単屈折性であり、ダイアモンドによって複屈折性である事はありませ ん。従って、ダイアモンドだとして提示された宝石を検査して、複屈折 性の性質を示したならば、その石はダイアモンドではないということが 分かります。 ◇単屈折性 VS 複屈折性 全ての結晶は、通常7つの種類(結晶系という)に分類されます。この 内、立方晶系(等軸晶系ともいう)に属する結晶が単屈折性を示し、他 の6つの結晶系に属する結晶は複屈折性を示します。また、結晶構造を 持たない物質(非晶質という。ガラスやプラスチックが該当)、そして 液体(液晶を除く)も単屈折性です。 普通の光は空気中であらゆる方向に振動しています。単屈折性の物質に 入射した光は減速しますが、光の振動方向が限定される事はありません。 一方、複屈折性の物質に入射した光はふたつの偏光に分かれ、且つそれ ぞれの偏光の進行速度は異なります(※)。 このような性質により、 複屈折性の透明物質を通してものを見た場合、二重のイメージでダブっ て見える事があり、宝石学ではこの現象をダブリングと呼んでいます。 (※)ただし例外的に複屈折性の物質でも、ある方向(1あるいは2方    向のみ。結晶系によって異なる)においてはふたつの偏光に分か    れるという現象を起こさず、この方向は光軸と呼ばれます。 ◇ダブリング 前述のように『ダブリング』つまり本来1つであるものが二重にダブっ て見える現象が検査石から観察されたならば、検査石は複屈折性の宝石 であることが分かるのです。 宝石鑑別で『ダブリング』の検査が重宝なのは、ダイアモンドとジルコ ン、あるいはダイアモンドと合成モアッサナイトの識別に於いてでしょ う。既に記した様にダイアモンドは単屈折性ですが、ジルコン及び合成 モアッサナイトはいずれも複屈折性であり、10倍のルーペで確認でき る強さでダブリングを示すからです。 ちなみに、単屈折性としてはダイアモンド以外に、ガーネットやスピネ ルを挙げる事が出来ます。 ▼ダブリングの写真(最近の更新項目より) http://www.yk.rim.or.jp/~ofukumot/ ☆∽∝∽★∝∽∝∽∝☆∝∽∝∽∝∽∝☆∝∽∽∝∽∝∝∽∝∽∝∽☆ ◆ 2.宝石学 Q&A - 合成モアッサナイト VS ダイアモンド - ∽∽∝ Q: 私は古物商を営んでおりまして、日頃からモアサナイト(※)について 疑問に思っていることを勇気をふるってお伺いする次第です。 「ダイアモンドかモアサナイトか」は古物を扱う者にとっては大問題です。 伺いたいのは以下のことです。 1.私は「肉眼や10倍のルーペで容易に分かるようなインクルージョン (クラックやフェザー(※2)のようなもの)があるものはダイア。 モアサナイトには二ードル状のインクルージョンだけ」と考えていました。 しかし先日はっきりしたフェザー状のインクルージョンが入った、モア サナイトと思われる石を見ました。こういうことはあるのでしょうか?   ただこの時は顕微鏡では見ていません。10倍のルーペで見ただけです。 どうしてこの石がモアサナイトと分かったかというと、同業他店に同じ 人物が現れ、品物は違うのですがやはりモアサナイトを売ろうとしたと いうことが分かったからです。 2.私が今まで見たモアサナイトはかなり黄色味が強く、ダイアのカラー でいうと少なくともD〜Fは存在しないように思います。従って黄色味 がない場合はダイアの可能性が高いと判断しています。 黄色味がないモアサナイトも存在するのでしょうか? −−− ※(発行者注)モアサナイト:  合成モアッサナイトは、ダイアモンドか 否かを検査する器具、  ダイアモンド テスターを用いてもダイアモンドと同じ反応を示す。 ▼合成モアッサナイト http://www.yk.rim.or.jp/~ofukumot/gem_encyclopedia/ka/synthetic_moissanite.html ※2(発行者注)フェザー:宝石中の割れの意。 A: ダイアモンドと合成モアッサナイトを識別する際には、前述の「1.宝石 鑑別の基礎 - ダブリング - 」に記した『ダブリング』の有無を確認す る事が最も効果的だと考えます。10倍のルーペで検査可能です。 10倍のルーペでダブリングを観察する場合には、石を通して石の反対 側にあるファセット稜線を注視すると良いでしょう。テーブル(一番大 きな面)に対して垂直方向からではなく斜め(例えばベゼル ファセッ トを通して)から観察する方が無難です。 これは、光軸がテーブルに 対して垂直方向になるように石取りされている可能性があるためです。 また1方向から観察してダブリングが見えない場合には、他の方向から も確認する事が肝要です。この理由も光軸方向から観察していることを 避ける為です。合成モアッサナイトの場合、複数方向から観察すれば必 ずダブリングを見つけることが出来ます。 ダブリングを初めてルーペで観察する場合、それが本当にダブリングで あるのかを確認したくなるかもしれません。 この場合にはカメラ店で レンズに付ける偏光フィルターを購入して利用します。手順は以下の通 りです。 1) 検査石を固定します。リングならばリングケースに差す、裸石ならば机 上にパビリオンを下に、テーブルが手前になるよう斜めに置けば良いで しょう。 2) 片手にルーペ、片手に偏光フィルターを持ちます。 3) 石とルーペの間に偏光フィルターをおき、偏光フィルター越しに石を通 して石の反対側にあるファセット稜線に焦点が合うようにルーペを近づ けます。通常の10倍ルーペの場合ルーペと2.5cmで距離で焦点が 合います。 この状態ではダブリングは見えません。ファセットは1本の線に見える はずです。 4) ファセット稜線(くどいようですが、石を通して反対側にあるファセッ ト稜線)を注視しながら、偏光フィルターを素早く90度程度回転させ ます。ダイアモンドの場合ファセット稜線に変化は現れませんが、合成 モアッサナイトの場合にはファセット稜線が上下左右のいずれかに動き ます。そして偏光フィルターを元の位置に戻せば、ファセット稜線は再 度動いて最初の位置に戻るはずです。 このように、偏光フィルターの回転に合わせてファセット稜線が動いた ならば、その検査石が複屈折性であることが分かります。つまり単屈折 性であるダイアモンド以外の宝石であることを意味するのです。 ▼ファセットの名称 http://www.gem-land.com/daio/cut/facet_name_flash.shtml ☆∽∝∽★∝∽∝∽∝☆∝∽∝∽∝∽∝☆∝∽∽∝∽∝∝∽∝∽∝∽☆ ご質問への返信が滞り気味です。順次お応えしておりますので、 返信の遅れをご容赦下さい。ご質問は以下のページより。 http://www.yk.rim.or.jp/~ofukumot/otayori.html ====★宝飾業界関係者様★=========☆発行人の会社が運営しています☆========= インターネット上の業者証、もうご取得ですか? ▼ 無料の業者証『ジュエリートレード・ロックID』のご申請はこちらです。 http://jtls.net/about_id.html ▲ 複数のジュエリー業界B2Bサイトに共通のID&パスワードでアクセス可能 空枠、ジュエリーケース、地金製品、シェルカメオなどの仕入れが出来ます。 ========================================================================== …………………………………………………………………………………… 敬称を省略しました。 …………………………………………………………………………………… ■[宝石学の世界] 207号 2004/10/13 ■Web site   ■配信システム:『まぐまぐ』  ■まぐまぐID:0000017866 ■受信アドレスの変更:旧アドレスは[購読解除]ページよりキャンセル  をしていただき、新アドレスをホームページより新規申し込みとして  ご入力下さい。 ■購読解除   ■発行人:福本 修 ■(C)Copyright 2004 by Osamu FUKUMOTO. All Rights Reserved. ■記事を許可なく転載することを禁じます。 ……………………………………………………………………………………