[宝石学の世界]--Vol.206-20041006
1. 人と鉱物が近い国、カナダ
▼写真・グラフ付の全文はこちらでお読みいただけます。
http://www.gem-land.com/column/mineralcanada.shtml
2010年の冬季オリンピック開催地に決定したバンクーバー。緑豊かで美しい
街として日本人にも広く知られている事と思います。一方、ジェモロジストの眼
で見たバンクーバーあるいはカナダに関する情報は、近年話題に欠かないダ
イアモンドの産出地という事以外は非常に限られているのではないでしょうか。
しかしながらカナダは世界銀行による97年の調査で世界第3位とされた天然
資源埋蔵量(日本は72位)を誇る鉱物大国であり、宝石学的にも着目すべき
点が多くあります。
本稿では日本人に馴染み深いバンクーバーのあるブリティッシュコロンビア州
(BC州)を中心にジェモロジストの眼で見たカナダを紹介します。
●宝石学的ホット スポット
ジェモロジスツニュースの読者諸氏ならば、カナダでは現在ダイアモンド鉱山
の開発ラッシュが続いている事、またゴールドの代表的産出国であること、そ
してイリデッセンスを呈するユニークなアンモナイトの化石を産出することをご
存じであろう。しかし、それ以外にもカナダは以下の点においてジェモロジスト
の興味をそそる存在である。まずネフライトの世界最大の産出地であるという
点、そして世界的に有名なバージェス頁岩や、世界最古の岩石(アカスタ片
麻岩)が発見されている点である。
ダイアモンドに関しては以前書かせていただいたので触れないが、その後の
大きな変化といえば、ダイヴィック鉱山が商業ベースでの出荷を始めた事であ
る。まだ開発中のパイプもありフル操業には至っていないものの、カナダで操
業を開始したダイアモンド鉱山はエカティと合わせて2つになった。
アンモナイトについてはG&G2001年春号に素晴らしい論文が掲載されてい
るので、興味のある方はそちらをご参照いただきたい。
●アカスタ片麻岩
ダイアモンドラッシュで沸くノースウェスト準州アカスタ地方で発見された岩石で
40億年程前に形成された世界最古の岩石と考えられている。
クォーツを含む点が特徴で、クォーツの存在によりマグマが冷えて出来た玄武
岩が再び融けるような当時の地球のダイナミックな運動を考えることが出来る
(写真3)。
●バージェス頁岩
カナディアンロッキー山中、ヨーホー国立公園から発見されたカンブリア期中期
の頁岩を指す。バージェス頁岩は特殊な三葉虫の化石や、体長50cmを超える
最初の大型捕食性動物と考えられているアノマロカリスの化石が見つかった事
でも広く知られている。
●ゴールド(金)
現在、世界の新産金(鉱山生産量)は年間2,500トン程度であるが、カナダでは
2002年の実績でおよそ148トン、金額ベースで23億ドルを産出している。BC州
はオンタリオ、ケベック州に次ぐ産出量であり、同年21トンが採掘された(産出
量の推移は表1)。
1823年にケベック州ショーディエール川においてゴールドの砂鉱床が発見され
ているものの、カナダで最初に商業ベースでの採掘が開始されたのは1858年、
BC州のクイーンシャーロット諸島である。以後今日までにカナダで採掘された
ゴールドの合計は9,550トン以上と推定される。人類が有史以来採掘精製した
ゴールドの総量は約14万トンと考えられているから、ゴールドの地上在庫中
6.8%がカナダ産ということになる。
BC州は、その発展の基礎がゴールドによって築かれたといっても過言ではな
い。東部より多くの人が入植するきっかけとなったのは、1859年のカリブー地
方におけるゴールド砂鉱床の発見であった。この地方では今日でも僅かなが
ら産出があり、合計110トンが採鉱されている。
特筆されるのは1896年、ユーコン準州のクロンダイク川で発見された巨大な
砂鉱床で、これはカナダ史上空前のゴールドラッシュを呼んだ。以来同準州
では合計430トンのゴールドが採掘されているが、近年は枯渇が進んでいる。
例えば1997年にユーコンで採掘されたゴールドは約6,659kgであったが、5
年後の2002年には2,018kgと1/3以下に減少している。
●ネフライト
世界で新たに採掘されるネフライトは年間300トンとも推定されるが、実にその
3/4がBC州で産出されている。文字通り世界最大のネフライトの産出地であ
るが、その歴史は古代において先住民に道具として利用されていたことを除け
ば比較的浅く1960年代より商業的な採掘が開始されている。主として採掘活
動が行われいるエリアを大別すれば3ヶ所あり、それぞれのエリアで複数の鉱
山が操業を行っているが、未操業の鉱区も含めればネフライトの存在は51の
場所で確認されている。
BCジェイドの名で土産物店で販売されているネフライトの動物彫刻は、その
ほとんどが染色グリーンだが、未処理の状態で強い緑色を呈するものもある。
また外観上はハイドログロシュラーと区別できないコショウ状のインクルージョ
ンを含むものも多く産出される。
近年注目を集めているのはBC州北部に位置するポーラー鉱山である。当地
産ネフライトは他のBC産ネフライトと比べて硬度がやや高く、より良好な研磨
が可能である。典型的なコマーシャルグレードの石にはトレモライトの白色の
脈状インクルージョン(写真4)が走っている。
後略(全文はウェブページに掲載)
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