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ピンクの風呂

その温泉に入った時、湯煙を通しておぼろげに浮かぶ光景に目を疑った。洗い場の壁がピンク色である!下駄箱に敷いてある新聞に「平成6年」(注:その時は平成11年)と書いてある鄙びた温泉の壁の色としては全く相応しくない。多少混乱しつつも平静を装い、小さな椅子に腰を落ち着けるべく、桃色の壁に近づいてゆく。すると、左目の隅もピンクの気配を感じる。眼を向けるとなんと、湯船もピンク色である。ますます訳が分からない。「どの様な色彩感覚で設計された温泉であろう?」などと思いながら小さな椅子に座り、改めて桃色の壁を間近に見た...

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1週間程前、中軽井沢を訪れた。当地で結婚式を挙げた友人を祝うためだ。披露宴の終わったのは午後4時過ぎ。二次会までの間に一風呂浴びてやろうと思い立ち、会場となったホテルにあったパンフレットを頼り「ゆうすげ温泉」に向かう。

送迎用のマイクロバスが一台あるきりの駐車場で車を降りると、浅間山が眼に飛び込んできた。中央部の崩落部分がよく見え、山が若かりし頃の勇姿が偲ばれる。現在より3割程度は高い標高だったかも知れない。

入り口をくぐると、直径50cmはあろうかというスズメ蜂の巣が2つ、高い天井からぶら下がっているのが眼に飛び込んできた。もちろん今、蜂がいるわけもなかろうが、生理的にギクリ(後に魔除けの意味があると知る)。スリッパに履き替えロビーにあがる。人影の無い受付で声を掛けると、程なく女将さんがニコニコしながら奥から出ていらしたので風呂を所望する旨お願いすると快諾下さった。タオルを借り、五百円払って浴場にむかう。

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「アッ!」と声が出そうになった。なんと、その壁は薔薇輝石(ロードナイト)(ピンク色に、黒い筋がある宝石材。しばしば彫刻の素材に使われるけれど、ドーム状にカットされ、銀製指輪に用いられることもある)で出来ている!先程まで風呂の設計者のセンスを信じられない思いで居たのも何処へやら、急に才気溢れる芸術家肌の設計士と、太っ腹の経営者による作品に出逢ったような気になったから現金だ。しげしげと石を観察する。薔薇輝石のスラブ(板)を幾枚も幾枚も壁に貼り付けて壁全体が作られている事が分かった。次に湯船の検分に向かう。こちらも同じ大きさのスラブを組み合わせて作られている。一枚の大きさは40X60cm厚さは5cm程。築うん十年という感じだが、とても豊かな気持ちでアゴまで浸かった。

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