[宝石学の世界]--Vol.247-20060131 ご購読ありがとうございます。今回はジェモロジスツニュース(発行GIA JAPAN※) に出稿した拙稿を転載します(一部編集)。 記事の全文、関連する著作権法抜粋、画像などは以下のページをご参照下さい。 http://www.gem-land.com/column/copyright.shtml ■著作権法への配慮はジュエリー業界の発展に寄与する。……………………………… ホームページを見て回ると、著作権を侵害している事例を数多く目にする。 例えば ジェムズ&ジェモロジーなどの学術誌や雑誌に掲載された図表や写真をスキャンして 勝手に掲載している、という事例を挙げることが出来る。これらの中には著作権侵害 を知りながら、いわば確信犯として掲載に踏み切っているというよりは、著作権とい う概念、あるいは知識の欠如からくるものが多いと思われる。また日常の業務として 行っている行為の中でも、実は著作権の侵害に該当するケースがある。著作権専門の 弁護士もいる程だから門外漢の私が記すのもどうかと思うが、多少なりとも著作権と いう概念の伝播になればと記すものである。 ●雑誌の写真を勝手に利用したら著作権侵害 雑誌や他者のホームページに掲載された著作物(写真やイラスト、記述内容等)は、 自分や家族が家庭内で用いるためにコピーをしたり、あるいは電磁的な複写をして用 いることができる(著作権法第三十条)。しかし、それを著作権者の許可を得ないで ホームページに掲載することはできない。第三十条の拡大解釈をして、個人的なホー ムページだから問題はないだろうとお考えの方もいるかもしれないが、この解釈は正 しくない。営利・非営利を問わず著作者の「複製権」(第二十一条 )と「公衆送信 権等」(第二十三条)の侵害となる。第二十一条とは著作者だけがその著作物を複製 する権利を有するという定めであり、第二十三条では著作者だけが公衆送信を行う権 利を持つと規定している。 つまり、インターネットで公開された他人の著作物は、 閲覧者が当該ページにアクセスをするごとに“送信”される事となる為、例え私的な ホームページであっても承諾なしに他人の著作物を掲載することはできないという訳 だ。 ●ホームページをプリントして、社内資料として配るのは著作権侵害 社内の資料作りのためにホームページをプリントする。あるいは学術雑誌の一部をコ ピーして配布する。社内に限定しての利用であるし、誰でも見ることが出来るホーム ページを印刷するのだから問題はないと思いがちだがこれらも著作権の侵害となる。 第三十条で定める私的使用の範囲を超えるからである。このような利用方法は多くの 方が経験しているものと想像するが、そのような法律であることには留意したい。 ●著作権者の承諾無く引用できるケース 著作権者の了解無くその著作物を利用してはいけないと記したが、引用として利用が 認められるケースが第三十二条に記されている。この条文では、公表された著作物を 報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で引用できるとしている。著作 権者の承諾は必要ないが、いくつか注意点がある。 まず、引用する著作物は公表されたものでなければならない事に留意したい。 また引用の際には、次の3点の要件を満たす必要がある。まず引用後の文章の主従関 係。引用する他者の著作物はあくまで従の関係でなければならない。次にかっこでく くるなどして、引用者の文章と引用した文章とが明瞭に区別されている事も求められ る。そして出典を明記することだ。 引用できるのは「報道、批評、研究その他」の場合とされている。では“その他”と は何か。宝飾業界関係者にとって最も興味があろう商品の販売促進を目的とするホー ムページやパンフレットへの引用は認められるのか。“その他”であるから明確な定 義ではないが、一般に先に述べた引用の3つの要件を満たせば販売促進が目的であっ ても引用は認められると考える事が合理的だ。 ●国などの発表資料 この連載でも過去に総務省のインターネット白書から多くを転載したが、国、地方公 共団体の機関、独立行政法人、あるいは地方独立行政法人が一般への周知を目的に作 成し、その著作の名義の下に公表する各種資料等は、「禁転載」等の記載が無い限り 説明の材料として新聞などの刊行物に転載することができると第三十二条の2項に定 められている。 仮に「禁転載」や「転載を禁ず」といった表示があった場合でも、大幅な引用はでき ないものの通常の引用は許されている。これは、「禁引用」との表示があっても同様 である。 ●保護期間が経過した絵画の写真 真珠で身を飾った近世ヨーロッパの貴婦人。このような絵画を真珠製品のポスターに 用いるとしよう。折良く手元にあった雑誌に、バラを持つマリー・アントワネット (写真)が掲載されていた。 連相の良い真珠のネックレスが品の良いアクセントと なっている。この写真をスキャンして用いる事を考えると、当然著作権への配慮が働 く。 絵画の作者は1755〜1842年に生きたヴィジェ・ルブランだから、著作権の保護期間は 経過している。では雑誌発行者の許可は必要だろうか。 この答えが文化庁のウェブページにあったので引用する。 「発行者の了解は必要ないと考えられます。雑誌の発行者には、自分が発行した雑誌 の紙面がコピーされることに関して、著作権法上特別の権利は認められていません。 また、雑誌に掲載するためにその絵を撮影したカメラマンも、平面的な絵画を平面的 な写真に撮ることは複製にすぎないと一般に解されていますので、絵画とは別に写真 の著作権は認められません。」 ●著作権の取得方法 著作権とは著作物の創作等と同時に「自動的」に発生するものとされているため、著 作権を取得する為の登録制度はない。しかしながら著作権に関する事実関係の公示な どの目的で、「実名の登録」、「第一発行年月日等の登録」等の登録制度はある。窓 口は文化庁著作権課。 ■知的財産への配慮は宝飾品市場の盛衰に関わる 他人の労力によって購われた著作権を侵害する事は、現に慎まなければならない。そ してその精神は著作権に留まらず、他者の知的財産を尊重する精神へと広げるべきだ ろう。 「名菓ひよ子」の立体商標登録を巡る「ひよ子」(福岡市)と「二鶴堂」(同市)の 審判(「ひよ子」の立体商標登録取り消しを二鶴堂が求めたが、特許庁はひよ子の立 体商標を認めた)。松下電器産業がワープロソフト一太郎などに特許を侵害されたと してジャストシステムを提訴した事例(ジャストシステムが高裁で逆転勝訴)。新作 映画が劇場でビデオ撮影され海賊版DVDが流通した事件。昨年も世間の耳目を集め た知的財産を巡る係争が数多くあった。 宝飾業界に於いても対岸の火事でない。知的財産への配慮は重要である。ヒットした デザインが直ぐにコピーされて出回るといった体質があれば、それは新たな創造意欲 を殺ぐだろう。創造、創作意欲がなければ魅力的な商品は生まれ得まい。魅力的な商 品を欠けばマーケットの拡大など思いもよらない。知的財産を尊重する成熟した精神 は、実はジュエリー業界の発展にも寄与するのである。 ※GIA JAPAN http://www.giajpn.gr.jp/ ☆∽∝∽∽★∝∽∽∝∽∝☆∝∽∽∽∝∽∝∽∝☆∝∽∽∽∽∝∽∝∝∽∝∽∝∽☆ 宝石に関するご質問や弊紙に対するご希望などをお寄せ下さい。 http://www.yk.rim.or.jp/~ofukumot/otayori.html ※ただし、画像をお送り頂いても宝石鑑別はできませんのでご遠慮下さい。 ====★宝飾業界関係者様★=========☆発行人の会社が運営しています☆=========== インターネット上の業者証、もうご取得ですか? ▼ 無料の業者証『ジュエリートレード・ロックID』のご申請はこちらです。 http://jtls.net/about_id.html ▲ 複数のジュエリー業界B2Bサイトに共通のID&パスワードでアクセス可能 空枠、ジュエリーケース、地金製品、シェルカメオなどの仕入れが出来ます。 ============================================================================ ■まぐまぐID:0000017866 (一部の読者にはまぐまぐ様を経由せずに配信) ■受信アドレスの変更:旧アドレスは[購読解除]ページよりキャンセルをして頂き、  新アドレスをホームページより新規申込みとしてご入力下さい。 ■購読解除   ■発行人:福本 修 ■(C)Copyright 2006 by Osamu FUKUMOTO. All Rights Reserved. ■記事を許可なく転載することを禁じます。