[宝石学の世界]--Vol.240-20051025 ▼ INDE 1. Picked Up News - 伝統工芸から転じた宝飾職人ジュエル増田HP独自制作 - 2. Picked Up News - 世界で最も高価な香水にはダイアモンドが用いられている - 3. 宝石学Q&A - GIAの新しいカットグレーディングシステムどう思いますか? 4. 宝石学Q&A  - 宝石鑑定士になるには資格が必要ですか? - ☆∽∝∽∽★∝∽∽∝∽∝☆∝∽∽∽∝∽∝∽∝☆∝∽∽∽∽∝∽∝∝∽∝∽∝∽☆ 1.Picked Up News - 伝統工芸から転じた宝飾職人ジュエル増田HP独自制作 ∽∝∝ 個人で活躍する宝飾加工職人のほとんどは、業界内からの受注が中心であろう。しか しながら、インターネットの普及により直接エンドユーザーからの受注を目指す方も 多い。具体的にはウェブサイトを活用しての受注活動を挙げることが出来るが、匠の 技の探求を続けてきた職人の多くにとっては、この作成作業が一苦労であるようだ。 ジュエル増田(横浜市)を主催する増田安日出(やすひで)さんは全くのパソコン音 痴だった。しかしホームページ作成を思い立ち、NHK教育テレビのパソコン講座を 唯一の教材に、このほど独力でホームページを立ち上げた。 増田さんは私の友人でもありまた全幅の信頼をおく宝飾加工職人だけれど、伝統工芸 の道から転じて現在では宝飾の世界で活躍している。その確かな腕は貴金属装身具製 作1級技能士として折り紙付きだけれど、何よりもその誠実な人柄が多くのファンを 惹きつける所以(ゆえん)だと思う。 さてこのジュエル増田のホームページだが、ジュエリー制作に興味のある方は必見で ある。80枚近くの写真を用いて、銀の板からユニークな魚モチーフのペンダント トップが出来上がるまでの工程を説明している。 ▼ジュエル増田ホームページ http://www.gem-land.com/~j-masuda/ ▼ジュエル増田の作品が購入できるページ http://www.gem-land.com/~j-masuda/fukei-2.html ☆∽∝∽∽★∝∽∽∝∽∝☆∝∽∽∽∝∽∝∽∝☆∝∽∽∽∽∝∽∝∝∽∝∽∝∽☆ 2.Picked Up News - 世界で最も高価な香水にはダイアモンドが用いられている - ∽ 世界で最も高価な香水が、いったい幾らで販売されているかをご存じだろうか?なに やらクイズみたいだけれど、正解はParfum V1という香水で価格は約970万円 (47,500ポンド)。CNNの電子版に写真が掲載されていた。 http://edition.cnn.com/2005/WORLD/europe/10/20/ultimate.perfume/ 香水は手作りされた木製のケースに入って提供されているが、ケースを開けるための 鍵はルビーやダイアモンドを留めたゴールド製という豪奢なもの。1998年に173個 が限定生産されたという。 しかしこれで驚いてはいけない。数ヶ月以内には2350万円(115,000ポンド)以上 に価格設定がされるという、Clive Christian No. 1という新作の香水がお目見えする というのだ。こう聞くと、970万円の香水がなにやらお買い得(?)に思えるから 不思議である。 ☆∽∝∽∽★∝∽∽∝∽∝☆∝∽∽∽∝∽∝∽∝☆∝∽∽∽∽∝∽∝∝∽∝∽∝∽☆ 3.宝石学Q&A - GIAの新しいカットグレーディングシステム、どう思いますか?∝ Q: GIAの新しいカットグレーディングシステムについて、福本さんはどう思われます か?新システムの複雑さもさることながら、そもそもGIAがこの新システムに踏み 切る動機については、いかなる機会でも未だ語られていないように思いますが・・。 何故今までの“輝きから来る美しさのグレードは、個々人の感応(官能)による”とし たルールのままではいけないのでしょうか? A: 従来のエクセレントカット(GIAでいうところのクラス1)以外にも美しい輝きを 示すダイアモンドが存在する、という業界の常識を真実として受け入れ、それを科学 的に立証することが今回の新システムに結びつく一連の研究であったと理解しており ます。そしてその研究に目処が立った事が新システムへの移行の動機となったかと。 GIAはそもそも自身で考案した従来のカット グレーディング システムが、必ず しも美しさ(輝き)を正当に評価したものではないと自覚しておりました。それであ るからこそ日本の大多数のグレーディング機関のように“エクセレント”、“ベリー グッド”のようなカット グレードを用いていなかった訳です。 しかしカットが ダイアモンドの輝きの源である以上、その秘密を解き明かすことは宝石学研究機関の 先端を行くと自負するGIAとしては避けて通ることは出来ず、研究を続けてきた訳 です。 今回の新しいカットグレーディングシステムが導入されることは、良いことだと思い ます。それは、それほど科学的ではない、今から90年近く前に考案されたプロポー ションを至高とする考え方に準拠した従来のカット グレーディング システムに初 めて本格的に科学のメスを入れて、光学的なダイアモンドの美しさを研究した成果で あると考えるからです。このプロジェクトには膨大なマンパワーとサンプル石が投入 されており、GIAにして初めて可能であったと考えます。 しかしその一方で、審美眼は個々人の感性によるというご意見には同感です。そして 新システムが導入されても、これを変える必要はないのではないでしょうか。例えば 私は、ブリリアンシー(※)よりもファイア(※2)が強調されたカットが好みです から、小さいテーブルを好みます。 仮に、大きめのテーブルを持ったエクセレント カットのダイアモンドと、小さいテーブルのベリーグッドを二者択一するならば、他 の要素が同じである限り後者を選ぶはずです。 −−− ※:ブリリアンシー ダイアモンドから反射する白色光の総量。新しいシステムでは従来のブリリアンシー に替わりブライトネスという用語が用いられている。その理由は、ブリリアンシーと いう用語を業界人の間でも微妙に異なる意味で用いている為と説明されている。 ※2:ファイア ダイアモンドから観察される虹色の光 −−− 新システムを理解する上で知っていた方が良いと思いますので、新システムでは考慮 されていない可変要素についても記します。 まず指摘したい点は、どのようなシステムであれダイアモンド ジュエリーが身に着 けられた状態の、全ての照明環境を再現し得ないという点です。 例えば新システムではCVE(GIA共通観察環境)と呼ぶ一貫した環境でのグレー ディング結果を示します。CVEは、照明環境(照明の種類とその組合せ、数、強さ 照射角度など)によって観察結果、つまりダイアモンドの輝きが異なって見えるため 一貫した検査結果を得るために開発されたダイアモンドの観察環境です。しかし、実 際にダイアモンドジュエリーを身に着けた人は、ライブハウス、海岸、レストランな ど様々な照明環境の中で行動する訳ですから、新システムによるグレードは、実際に 身に着けられた状態のその場その場のダイアモンドの輝きを評価している訳ではあり ません。 また新システムではガードルより上にある半球形状の空間からの光を前提としていま すが、例えば立て爪リングの場合、ガードルより下からの光の入射もありますが、こ れに関しては考慮の対象外となっています。 更にもう一点、ダイアモンド ジュエリーを身に着ける人には、他人に自分のダイア モンド ジュエリーを“見てもらいたい”(俗に言えば見せびらかしたい)という心 理もあるかと思います。新システムではフェースアップでの輝きを検査した訳ですが 身に着けられたダイアモンド ジュエリーを他人が見る場合には、ほとんどの場合に 斜めから、つまりフェースアップ以外の角度からとなる訳ですが、これも研究対象で はありません。 最後に人による審美眼の違いについて記します。新システムではブライトネスとファ イアのバランスが考慮されています。繰り返しとなりますが、多数が賛同する美の基 準があるとはいえ、私を含め、ブライトネスを犠牲にしてもファイアが強い方が魅力 的に感じる人もおられるでしょう。 繰り返しますが、これらは可変要素であって、これらを盛り込んではシステムという ものが成り立たない訳です。従って、これらを検討していない事が、新システムの瑕 疵になるとは思っておりません。 ▼関連:GIA、新しいカットグレーディングシステム来年1月から適用開始と発表 http://www.gem-land.com/news/gia_new_cut_system.shtml ☆∽∝∽∽★∝∽∽∝∽∝☆∝∽∽∽∝∽∝∽∝☆∝∽∽∽∽∝∽∝∝∽∝∽∝∽☆ 4.宝石学Q&A - 宝石鑑定士になるには資格が必要ですか? - ∝∝∝∝∽∽∽∽∝ Q: 私は宝石に興味を持ち始めてまだ日が浅いのですが宝石ビジネスに興味があります。 宝石についてお詳しい福本様にお聞きしたいのですが、偽物と本物の見分けや、品質 の見分け方などは専門学校で高いお金を出さないと学べないのでしょうか。 また宝石の鑑定書を発行するには特別な資格が必要なのでしょうか。 本や通信教育 その他で学べる方法があれば教えてくださいませんでしょうか。宜しくお願いいたし ます。 A: まず『宝石鑑別』と『宝石鑑定』という用語について、また『品質の判断』について 記します。 『宝石鑑別』とは、次の作業を指します。 ・検査対象が偽物か本物か? ・本物ならばなんという宝石か? ・処理の有無は? ・処理が施されているならば、それはどのような処理か? 宝飾品を購入した際に添付されていることのある、使用宝石が「何々という宝石であ る」と書かれた書類は「宝石鑑定書」と表現されている例もありますが、正しくは 「宝石鑑別書」といいます。 『品質の判断』は、ダイアモンド、色石(カラードストーン)、真珠、宝飾品のそれ ぞれごとに固有の知識が必要です。 『宝石鑑定』とは、検査対象がいくら位の資産価値があるのかを判断する事を言いま す。 宝石鑑別の知識に加え、品質の判断ができ、且つ宝飾品や裸石のマーケット バリューに精通している事が必要です。 上記を業務として行うには、膨大な知識や経験が必要です。実務に携わりながら勉強 を進めるというのであれば別ですが、なんら予備知識のない状態から市販の本を頼り に、実務で通用する高いレベルの宝石鑑別やアプライザル(鑑定)の技能を修得する ことは、事実上不可能だと考えます。 ●宝石学の通信教育 グーグル※などの検索エンジンで「宝石学 教育」などと検索するといくつかの学校 を調べることが出来ます。一番最初に表示されるGIA JAPAN(※2)という宝石の専 門学校では、通信教育でGGという資格を取得することができます。下段に同校の 資料が請求できるページのURLを記しました。 学費が高いか否かは、ひとえに身に着ける事もできる知識の価値をどう判断するかに よると思います。 ●宝石鑑別書を発行する資格 日本において宝石鑑別書を発行するのに資格は必要ありません。 ※:グーグル http://www.google.co.jp ※2:GIA JAPANの資料が請求できるページ http://www.giajpn.gr.jp/form.shtml ☆∽∝∽∽★∝∽∽∝∽∝☆∝∽∽∽∝∽∝∽∝☆∝∽∽∽∽∝∽∝∝∽∝∽∝∽☆ 宝石に関するご質問や弊紙に対するご希望などをお寄せ下さい。 http://www.yk.rim.or.jp/~ofukumot/otayori.html ====★宝飾業界関係者様★=========☆発行人の会社が運営しています☆=========== インターネット上の業者証、もうご取得ですか? ▼ 無料の業者証『ジュエリートレード・ロックID』のご申請はこちらです。 http://jtls.net/about_id.html ▲ 複数のジュエリー業界B2Bサイトに共通のID&パスワードでアクセス可能 空枠、ジュエリーケース、地金製品、シェルカメオなどの仕入れが出来ます。 ============================================================================ ■まぐまぐID:0000017866 (一部の読者にはまぐまぐ様を経由せずに配信) ■受信アドレスの変更:旧アドレスは[購読解除]ページよりキャンセルをして頂き、  新アドレスをホームページより新規申込みとしてご入力下さい。 ■購読解除   ■発行人:福本 修 ■(C)Copyright 2005 by Osamu FUKUMOTO. 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