Vol.196-20040525
1. 「琥珀の間」はナチスではなく、実は革命軍兵士に破壊された?
2. 宝石学Q&A - エメラルドやルビーに「ひび」は発生する? -
3. 宝石学Q&A - 私の緑色の石は何? -
4. Picked up News - パンダ パイプの地下採鉱正式に承認 -
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◆ 1. 「琥珀の間」はナチスではなく、実は革命軍兵士に破壊された?
以前ご紹介したエカテリーナ宮殿の琥珀の間。約10万個に及ぶ琥珀が
部屋の内装に用いられた正にユニーク(他に類を見ない)な存在である。
琥珀の間は従来1941年ナチス・ドイツ軍によって持ち去れたとされ
ているが、この度、実際には革命軍によって破壊されていたとする説が
発表された。
信憑性は不明ながら、このほど上梓された「The Amber Room: The Untold
Story of the Greatest Hoax of the Twentieth Century」(琥珀の間:
20世紀最大の嘘にまつわる秘話)という新刊書にその旨の説が記されて
いる事をサンデーテレグラフ オンラインが報じている。
▼関連「琥珀の間について」
http://www.yk.rim.or.jp/~ofukumot/gem_encyclopedia/ka/amber_room.html
▼サンデーテレグラフ
http://www.telegraph.co.uk/
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◆ 2. 宝石学Q&A - エメラルドやルビーに「ひび」は発生する? -
Q:サンディー さん
先日フランスの老舗ジュエラーの昔の作品(製品?)を見る機会があり
ました。デザインも素材もそれぞれすばらしいのですが、既に「クラッ
シック」なスタイルで「アンティーク」といえるものでした。
そこで気になったのは、かなり大粒のエメラルド、ルビーについて、
「ひび」のようになっているのが結構たくさんあったのですが、こうい
う状態になるのは比較的良くある事ですか?
石自体の大きさは4センチ位のオーヴァルのようなカボションタイプな
のでボリュームのある物でした。物によっては4センチ幅位の大きなま
まの石を加工しているものもありました。
やはり石も100年近くたてばこのようになるものなのでしょうか??
もしくは、やはり石の質の問題でしょうか??
たしかに「ダイヤモンド」製品にはその症状はみられませんでした。
もしかしたらカットの仕方が影響するんでしょうか??
A:
●エメラルドについて
エメラルドのほとんどには、程度の差こそあれ「ひび」が存在します。
全く無傷のエメラルドは存在しないといっても良いほどです。
「ひび」つまり割れ目には、微量とはいえ空気や液体等エメラルド以外
のものが存在します。そしてこれらの空気や液体の屈折率は、エメラル
ドとは異なります。
ある媒質中を進行中の光は、屈折率の異なる媒質に到達すると、一部は
反射し一部は屈折してその媒質の中に進入します。これをエメラルドに
当てはめて考えてみましょう。エメラルドの中を進行中の光が屈折率の
異なる「ひび」に到達すると、一部は反射し一部は屈折して「ひび」を
透過する事となります。この光の反射や屈折が生じるために「ひび」が
目に見える訳です。「ひび」の屈折率が仮にエメラルドと同じで有れば
「ひび」はほとんど見えない事となります(色などその他の条件もあり
ますが)。逆に「ひび」とエメラルドの屈折率の差が大きくなる程に、
その「ひび」は目立って見えることとなるのです。
そこで「ひび」に空気の代わりにエメラルドに近い屈折率を持った油や
樹脂を流し込んで目立たなくすると云う処理が一般的に行われています。
1,500年前には既にこの手の処理が行われていた記録が残っています。
古くは天然の油を、近年では合成樹脂を用います。
古いジュエリーに用いられたエメラルドの処理には天然の油が用いられ
ていることでしょう。この油は、経年変化します。別の言い方をすれば、
年月により、干上がるとでも申せましょうか。こうなってしまえばもは
やエメラルドに近い屈折率ではなく、結果として未処理石のようにヒビ
が目立ってくる、ということが云えます。
▼関連
http://www.gem-land.com/daio/treatment/emerald_oiling.shtml
●ルビーについて
もともと「ひび」が無かったルビーに、ひとりでにヒビができることは
ありません。その石の元々の状態がご覧になった状態であったと考える
方が自然かと思います。ルビーに対してもエメラルドに似た処理が施さ
れる場合がありますが、フランスの老舗ジュエラーがそのようなルビー
を用いて作品を作る事は考えにくいと思います。それはエメラルドに対
する上記の処理は「無傷」のエメラルドが極めて稀なこと、また1,500年
以上前から行われているためにエメラルドとその処理(オイル処理など
と呼ばれる)が一体化して考えられていて、いわば市民権を得ているの
に対して、ルビーへのその種の処理は一般的ではなく、且つその処理が
仮に行われる場合には赤色材が用いられる、つまり染色処理である為です。
ただ、ルビーとされている古い宝飾品には実際にはルビーでない石が使
われている例もあります。英国王室財宝の、黒太子の王冠と呼ばれるも
のに留められている大きな赤い石は長年ルビーと云われておりましたが、
検査の結果スピネルであることが分かりました。ルビーは硬度の高い石
で、装身によりキズ、割れは比較的生じにくい物ですが、他の鉱物の場
合、着用によるいわゆる後(あと)キズも眼に付く場合があるという事
がいえます。
●カットの影響
日常の環境にある宝石に「ひび」が自然に出来る事はありませんから、
カットが影響するという事はありません。
お応えとなったかは不安ですが、ご参考まで。
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◆ 3. 宝石学Q&A - 私の緑色の石は何? - ∝∽∝∽∝∽∽∝∽∝∽
Q:
先日主人が香港に行き、お土産で緑色の石のついたネックレスを買って
きてくれました。
緑色の中に黒色も少しあります。
値段がはじめ8万といわれたそうです。結局値引いて4万円で購入しま
した。日本人だからと高値で売られたのではないか、またわたしはこれ
が偽物ではないか心配です。
石の名前を教えて下さい。
A:
お役に立てずに恐縮なのですが、あいにく分かりかねます。
緑色の宝石の中に、黒色のつぶつぶが混ざって見えるような宝石には
ネフライトやハイドログロシュラーというガーネットの一種などがあ
ります。お手元の宝石がこれらの内のどちらかだという意味ではあり
ませんが。
http://www.yk.rim.or.jp/~ofukumot/gem_encyclopedia/ha/hydrogrossular.html
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◆ 4. Picked up News - パンダ パイプの地下採鉱正式に承認 - ∝∝
BHPビリトンは5月4日、エカティ鉱山のパンダ パイプの地下採鉱
に関わるおよそ206億円の予算を承認した。パンダの地下採鉱は当初
からの計画の一部ではあったが、今回の予算承認によって地下採鉱の実
施が確定した事になる。
この地下採鉱によって2005年初頭から6年間以上に渡り470万
キャラットのダイアモンド原石が採鉱される見込み。
パンダ パイプはカナダ最初のダイアモンド鉱山エカティ鉱山の中心的
鉱床として1998年10月以来露天掘りで採掘が実施されていたが、
2003年6月に現在の工法での採掘が採算限界点に達していた。
▼BHPビリトン ダイヤモンズ
http://ekati.bhpbilliton.com
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ご質問への返信が滞り気味です。順次お応えしておりますので、
返信の遅れをご容赦下さい。
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■[宝石学の世界] 196号 2004/05/25
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